コクヨロジテム流 物流企業におけるDX推進術とは…

(株)コクヨロジテム
未来戦略企画室 室長
山本 紗代美 氏

スマート物流 EXPO 事務局 RX Japan
2023年9月28日

10月に名古屋で開催される「スマート物流EXPO 物流DX/ロボット/カーボンニュートラル展」。今回は、同展で「コクヨロジテム流  物流DX導入障壁の乗り越え方と創りたい未来」と題して講演をされる、(株)コクヨロジテム 未来戦略企画室 室長 山本 紗代美氏のインタビューをお届けします。講演に先駆けて、物流業界の「2024年問題」など喫緊の課題にも触れながら、コクヨロジテムが取り組むDX戦略や、それを推進するにあたっての課題、そして課題解決のための工夫など、興味深いお話をお聞きしました。

コクヨロジテムと山本氏について

ー はじめに、山本さんとコクヨロジテムさんについて教えてください。

山本  私は、2019年にコクヨロジテムに企画のポジションでキャリア入社し、入社当初から俯瞰して会社全体のビジョンや戦略をつくっていくような仕事を担当してきました。私自身が、何もないゼロの段階から何かをつくり上げていくことを得意としているので、人財戦略を立てたり、今回の講演でお話するようなDX戦略を立てたりしながら、それを事業にどのように落とし込んでいくのかを日々試行錯誤しています。
コクヨグループでは文房具とオフィス家具を主な製品として取り扱っており、コクヨロジテムは、オフィス家具の物流を担う子会社になります。私たちコクヨロジテムが取り扱う製品は、オフィスチェアやデスクなど不定形なものが多いため、いわゆる“物流”と言われてイメージされるように段ボールの中にすべての製品を納めて運ぶことはできません。物流業界向けの技術開発が進む一方で、こうした製品特性に合う技術は少なく、弊社では倉庫への技術導入を行えず、長らく人力に頼った業務体制が続いていました。2024年問題も間近に控え、労働力不足も騒がれる中で、そこをなんとかしないといけないという思いから、現在の私の仕事があります。

コクヨロジテムの「2024年問題」への取り組み

ー 「2024年問題」というキーワードが出てきましたが、それについては多くの物流業者さんが今まさに苦悶しているような状況があると思います。そういった中で「2024年問題」を解決するための御社の DXのソリューションや取り組みなどについて教えていただけますか。

山本  2024年という差し迫った問題なので、一番効果的な施策から優先順位をつけて取り組みをはじめています。それはDX周りの技術だけにとどまらない部分もあるのですが、まず一つ、バースシステムは優先順位を高めて導入したという経緯があります。その他では、パレタイズといった梱包技術の改善に向けた取り組みも一気に進めていき、9割の輸送経路でのパレット化を実現しました。
私たちは、「運ぶ」という場面に関わるところだけを変えれば2024年問題が解決するとは思っていません。倉庫内作業にフォーカスをすると、たとえば運ぶ時間を変えると、荷物を受ける側、出す側の作業工程にも影響が生じますよね。なので、倉庫内の作業を効率化・省力化・省人化するような技術を、今まさに導入していっている、という状況です。

ー 確かに受け取る側の改善もしなければ解決の最短ルートではないと思うので、そういう着眼点が素晴らしいと思います。ちなみに、御社が物流のアナログな部分に対して、DXを本格的に進めていこうとされたのは、この3~4年での取り組みになるのでしょうか。

山本  そうですね、当時はDXと言わずにITと言っていましたが、コクヨロジテムでは2020年頃からIT戦略を立てようという動きがあり、当時は私以外のメンバーが担当してくれていました。私が関わった時点ですでに戦略まではできていましたね。でも、これもあるあるだとは思うのですが、IT導入を進める戦略を立てたことで満足してしまっている状態でした。今後、どの程度の投資効果が期待できるのかなども含めて、カタチにしていく作業に関しては、今回の講演タイトルにもなっている「障壁」をクリアにしていかないとできないことなのだと思います。だから、そこからが私の腕の見せ所なのかなと思っています(笑)。

DXを進めるにあたっての課題

ー それでは、より具体的に掘り進めていきたいのですが、御社でDXを推進していくにあたって課題と感じる点はありましたか。

山本  多くの会社さんがDXを推進していく時に「どうやって経営の意思決定をしたらいいだろう」とか「現場の人をどうやって巻き込んだらいいだろう」とか「継続させるにはどうしたらいいだろう」というようなことが障壁になっているのだと思います。もちろん、御多分に洩れず、弊社でもそのような課題はありました。

ー やはり会社でDXを推進していこうと思っても経営層だけが意識的で、現場が全然ついていけないという話をよく耳にします。そういった中で御社は、組織横断型の推進チームをつくって各事業領域でDXを推進しているとのことですが、この辺りについて少しお話をお聞かせいただけますか。

山本   DXに限らず、これまでも事業上での重要な課題に対して組織横断型のプロジェクトをいくつか作って推進しているんですよね。その中の一部にDX推進やIT化もあって、そうした取り組みを通じて少し意識を変えてきたところがあります。ただ、これ以上喋ると・・

ー 講演内容のネタバレになってしまいますよね。
やはりそのような組織横断型のチームをつくって推進していくという工夫そのものが、かなりクリエイティブですよね。詳細については、ぜひ講演当日にお話いただければと思います。

コクヨロジテムが推進する「実験場コンテスト」とは?

ー つい最近のニュースリリースで「実験場コンテスト」というプロジェクトを拝見しました。こちらについても簡単に教えていただけますか。

山本  それも講演内容に触れてしまうことになるので、ここでは概要だけお伝えしますね。
「実験場コンテスト」は、物流倉庫への技術導入を最終目的として、様々な企業・研究機関から新規性・革新性に富んだ“ユニーク”なアイデアを募るプロジェクトです。技術導入を自社だけで進めていくのはやはり難しいことなので、いろいろな方々のご協力をいただきながら進めていこうという趣旨で始めているところです。

ー なるほど。やはり一社だけでは難しいことも、何社か集まると多様なアイデアが生まれるということもありますからね。よく物流系の企業さんも、たくさんの方々をお招きして、そこでニーズを引き出して自社の製品に活かすということをされていますが、そうやって人と人がつながってアイデアは生まれていくのかなと思います。「実験場コンテスト」、すごく楽しみですね。こちらも詳細は、ぜひ講演でお話いただければと思います。

今回の講演内容について

ー 今回の講演でお話しいただく内容としては、DX推進や技術導入にあたって社内で上がってきた課題や、実際にその課題をどのように改善したか、その結果を踏まえて、次にどこを目指すのかといった内容になるのでしょうか。

山本 そうですね。今回、私がお話しする内容としては「DXを“推進”する」というところに重きをおいています。技術の内容にかかわらず、新しい何かを導入しようとしたとき、それを推進していくために、「そういうところにポイントやコツがあったのか」と気づいていただけたり、刺激になったりするような内容でお話しさせていただきたいと思っています。

どのような方に一番きいてほしいか。

ー 最後に、今回の講演をどのような方々に聴いていただきたいか、特に想定している層があればお聞かせください。

山本  DXを推進している経営者の方が「そんなところにウチが導入できないボトルネックがあったのか」というところを気づいていただける講演にできたらいいなと思っています。また、私たちは常に何かお取り組みをご一緒できるパートナーを探していますので、そういう意味では一緒に頑張りたいなと思ってくださる経営層の方々にお話をさせていただけたら非常に嬉しいと思っています。

ー ありがとうございます。講演を楽しみにしています。

[名古屋] スマート物流 EXPO 特別講演

【事例で紹介】 物流施設DXからサステナブル経営まで
「コクヨロジテム流  物流DX導入障壁の乗り越え方と創りたい未来」

日時:2023年10月27日(金)10:00 ~11:10

講師:(株)コクヨロジテム 未来戦略企画室 室長 山本 紗代美 氏

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